脳梗塞について
脳梗塞は、脳の血管がつまる病気です。血管が詰まるとその先に血液が流れなくなり、酸素や栄養が不足します。この状態が続くと脳細胞が壊死し、様々な症状や障害を引き起こす可能性があります。
脳梗塞は、脳へ血液を送る動脈が詰まることで脳細胞が壊死し、わずか数分で言語障害や半身まひを引き起こす深刻な疾患です。日本では脳卒中全体で年間約10万人が死亡し、その半数以上が脳梗塞によるもの――脳血管疾患は依然「死因第4位」で、寝たきり・要介護の最大要因の一つでもあります。
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しかしその多くは、生活習慣の見直しと“FAST”※に代表される早期発見で重症化を防ぐことが可能です。
本ページでは、
「もし自分や家族に突然の“サイン”が現れたら?」――知識があるかないかが、救える脳細胞の数を左右します。 まずは脳梗塞の基本を正しく理解するところから始めましょう。
※FAST:Face(顔のゆがみ)/Arm(腕の脱力)/Speech(ろれつ)/Time(発症時刻と救急要請)の頭字語。
脳梗塞とは?
脳梗塞(のうこうそく)は 脳へ酸素と栄養を運ぶ動脈が“詰まる”ことで、脳細胞が壊死してしまう疾患 です。脳血管疾患全体の約7割を占め、日本の死因第4位に位置づけられています。迅速な治療が遅れるほど後遺症や死亡率が上昇するため、発症後の“時間との闘い”が特徴です。
分類 | 血管が詰まるメカニズム | 背景疾患・状態 | 備考 |
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ラクナ梗塞 | 細い穿通枝(深部小血管)の狭窄・閉塞 | 高血圧、加齢 | 症状が軽くても再発を繰り返しやすい |
アテローム血栓性脳梗塞 | 動脈硬化で狭くなった太い頸動脈・脳主幹動脈に血栓が付着 | 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙 | “頸動脈狭窄”がキーワード |
心原性脳塞栓症 | 心房細動などで心臓内にできた血栓が脳へ飛ぶ | 心房細動、心筋梗塞後、人工弁 | 広範囲が一気に虚血 → 重症化しやすい |
脳梗塞の原因

脳梗塞の原因として、一般的に高血圧・糖尿病・高脂血症などが知られていますが、喫煙や肥満・食事・アルコールの過剰摂取・運動不足・ストレス(睡眠不足)などの生活習慣や加齢・脱水により動脈硬化が促進され発病するリスクが高まります。
また、不整脈の一種である心房細動は心臓に血栓ができやすくなり、血栓が脳につまると脳梗塞になる原因になります。
1. 生活習慣病による 動脈硬化
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高血圧:最重要リスク。血圧が 10 mmHg 上がると発症リスクは 1.5~2 倍に増加。
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糖尿病・脂質異常症:血管壁を傷つけ、プラーク形成を促進。
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喫煙・過量飲酒:末梢血管を収縮させ血栓形成を助長。
2. 心房細動などの心疾患
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心房細動のない人と比べて脳梗塞発症率は約5倍。
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弁膜症、心筋梗塞後、心筋症も血栓の温床になる。
3. 血液・血管の固有要因
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加齢(細小血管の脆弱化)
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遺伝素因(家族歴、もやもや病など)
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高血液粘度(脱水、赤血球増加症)
4. ストレス・自律神経の乱れ
慢性的ストレス→交感神経優位→血圧上昇・心房細動誘発・生活習慣の乱れ —— リスクを多重に高める。
5. その他の誘因
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脱水(夏場、感染症、長時間のサウナ等)
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薬剤(ピル、ホルモン療法)
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睡眠時無呼吸症候群 … 夜間低酸素→血管障害
脳梗塞の症状
前兆:一過性脳虚血発作(TIA)に要注意
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症状が数分〜1時間以内に完全消失しても油断は禁物。
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TIAを経験した人の10–15%が3か月以内、半数は48時間以内に本格的な脳梗塞を起こすと報告されています。
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典型的症状は脳梗塞と同様(片麻痺、視覚障害、失語など)。
ポイント:TIAが疑われたら症状が収まっていても救急受診し、MRI・頸動脈エコー・心電図などで原因を特定し、抗血小板薬や抗凝固薬などの即時治療を開始することが再発を防ぐ鍵になります。
脳梗塞の症状は多くが突発的に発現します。とくに以下のような合図が同時または単独で現れたら、一刻も早く119番通報し脳卒中センターを受診することが予後を左右します。
FAST/BE-FAST で覚える6つの緊急サイン
頭字語 | チェックポイント | 具体例 |
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B = Balance | ふらつき・まっすぐ歩けない | 急に立てない、転倒しそうになる |
E = Eye | 片目が見えない・視野が半分欠ける | “カーテンが下りた”ように暗くなる、物が二重に見える |
F = Face | 顔のゆがみ | 「イー」と言うと片側の口角だけ垂れ下がる |
A = Arm | 片腕の脱力・しびれ | 両腕を前に出すと片方だけ下がる |
S = Speech | ろれつが回らない・言葉が出ない | “今日はいい天気”と言えない、理解できない |
T = Time | 発症時刻・救急要請 | 1分でも早く119番! |
顔・腕・言語の3項目を示す「FAST」に、BalanceとEyeを加えた「BE-FAST」は後部循環(小脳・脳幹)梗塞の検出率を大きく向上させるため欧米でも推奨されています。
見逃しやすいその他の症状
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片側のしびれ・感覚消失(手足・顔)
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突然の激しい頭痛(出血性との鑑別が必要)
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嚥下障害・声がかすれる
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めまい・嘔気(特に小脳梗塞)
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意識がぼんやりする、失神
これらは単独でも発症することがあり、「持病のせい」「疲労のせい」と自己判断してしまうと治療の“時間的窓”を逃してしまいます。
脳梗塞の症状は、脳のどの部位(血管)で梗塞を起こしたかにもよって現れる症状は異なります。
主な症状は以下です。
麻痺
脳梗塞や脳出血を起こした場合、多くの人に片半身が動かない(動きにくい)症状がでます。脳に障害がある場所に対して左右に障害が出ます。
感覚障害
麻痺と同時にその半身の感覚異常が起こることがあります。特に手や足に特徴が現れます。
言語障害
言語障害には失語症(言葉が出にくい)と構音障害(発音がしにくい)があり周囲からは理解されにくく、本人は状況の判断が出来ているため、非常に焦りを感じることが多いです。
視野障害
視野障害では、例えば右脳の障害では右目でも左目でも左半分が見えない、視野が狭くなる、ぼやけてみえるなどの症状があります。
失調
物をとろうとしても上手く掴めない事や通り過ぎてしまうような症状です。食事時も箸で食べ物を掴むのが困難になります。
その他にも、頭痛・めまい・耳鳴り・意識障害などがみられる場合があります。
脳梗塞の検査
自覚症状・感覚障害の確認とMRI画像にて診断を行います。
上記症状を脳出血などの他の疾患と区別するためにもMRI・CT検査を行います。
MRI検査の撮影方法で拡散強調画像と呼ばれる方法は、新しい脳梗塞部分をとらえることができます。
この検査結果により、古い脳梗塞か新しい脳梗塞かを区別することで治療の緊急性を図ることができます。
また、MRA検査では、脳の血管を検査する方法で動脈硬化の程度や狭窄・閉塞の有無を調べることができます。
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非造影 CT で“出血を除外” → CTA/CTP で血管・血流評価
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MRI(DWI/FLAIR) は微小梗塞の検出・発症時間推定に最適
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血液検査 は t-PA の禁忌確認と二次予防設計の基礎データ
脳梗塞の後遺症
脳梗塞の後遺症は以下に分かれます。後遺症の程度は人様々で、主な障害は以下になります。
神経障害
身体機能に起こる障害です。言語障害・運動障害・感覚障害・視野障害・排泄障害・嚥下障害があります。
高次機能障害
言葉を理解し話す・判断する等の精神活動の障害です。言語障害・記憶障害・認知障害・行為障害です。
感情障害
気分や感情の変化を基本とする障害で感情が不安定になる障害です。

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